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『ヒトラーの贋札』を見ました

第二次大戦中のドイツによる贋札計画を描き、先日のアカデミー賞で外国映画賞を獲得した、『ヒトラーの贋札』を見ました。

第二次世界大戦末期、戦局がおもわしくないドイツではイギリス・アメリカを経済混乱に陥れるために、大量の贋札を作り金融市場を混乱させる計画が立案された。集められたのはユダヤ人やロシア人。強制収容所内の特別区画に集められた彼等はドイツのために贋札を作ることを命じられる。しかし、それは連合国や同胞達に対する裏切りでもあった。

ドイツによる贋札計画は後に大量の贋札が発見されたことから明るみになり、かなり精巧な物が作られていたというのは分かっていました。その為、大戦中を舞台にしたスパイ物などでも比較的出てくるアイテムであります。

しかしこの作品では、それを作らされる人達にスポットを当て贋札を作り生き延びることと、その贋札のためにナチスドイツが続くことの矛盾が、物語の背景を埋めています。

特に収容所内の描写は、贋札を作ることで快適な環境を与えらかれらと、塀一枚隔てた向こうでは、ユダヤ人の非人道的な扱いを受けている。その境遇の狭間には、天と地ほどの差があること。そして、彼等が生かされるのは贋札が出来るか出来ないかの違いで、完成しなければ彼等の運命も簡単に消えてい舞うことが、嫌と言うほど感じられます。

権力に媚びると言われても生き延びようとする者や、贋札の完成をわざと遅らせようとする者。家族の虐殺を知り死を選ぼうとする者など、時代の流れとはいえ酷い時代、酷い環境であると思わざるを得ません。

特に贋札の材料として、古紙が送られてくるわけですが、その中には収容所で虐殺された人達の見文書や手紙なども含まれ、それを仕分けることで虐殺の事実を量的に感じることになります。

物語の原作者は印刷機を扱えるアドルフ・ブルガーですが、監督はあえて原盤作成者のサロモン・ソロヴィッチを主役に据え、生き延びることを望みながら、消して権力に媚びるわけではないと言う、天才贋作者のプライドを表わしました。

彼が贋札を作るのも、自らが生きるためと言いながら、実はその工房に集められた全員を生かすためにと言うことをしっかりと描いており、それを演じきっていたカール・マルコヴィクスの演技も大変すばらしかった。

一方で正義感あふれるブルガーを演じるアウグスト・ディールの迫力もなかなかの物です。家族が虐殺されたことでナチスに対する敵対心を燃やし、堂々と正義を貫こうとする姿には、これはこれで一つの生き方であると思います。

私はこの作品を見て、『正義とは何か?』を問われていたと感じました。

贋札を作ることは消して良いことではありません。しかし、あの当時、生き延びる為に贋札作りをすることを非難することは出来ない。

一方で物語中に言われるように、贋札計画が成功し連合軍が敗退する、あるいは集線が遅れることは、ナチスによる虐殺の被害者を増やすことにも繋がります。ここの矛盾が工房内でも、軋轢を生む理由になる分けです。

他人を犠牲にして自分が生き延びるのか、自分を犠牲にして他人を生かすのか、そのことはこの作品のような状況においては、非常に苦しい決断だと思います。これについてはじっくり考えることが必要だと感じました。

ラストは、贋札を持ってフランスに逃げ延びたソロヴィッチの、心の虚無あるいは現実世界に対するあきらめを感じさせ、浜辺でのとても美しくしかも悲しげでありながら、幸福感を感じさせた良いシーンで締めくくられました。

Ps.3月1日ファーストディということもあったのでしょうが、単館上映(90席)の劇場が満員でした。さすがは『アカデミー賞』効果ですね。

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kain

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